外国直接投資からの環境配慮行動のスピルオーバー効果-ベトナムの製造業における企業データによる分析-

執筆者 神事 直人  (ファカルティフェロー) /鶴見 哲也  (南山大学)
発行日/NO. 2015年10月  15-J-057
研究プロジェクト 貿易・直接投資と環境・エネルギーに関する研究
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概要

本論文ではベトナムの製造業を対象に、外国直接投資(FDI)が在ベトナム企業の環境取り組みに及ぼす影響を、ベトナム統計局の企業レベルのデータを用いて検証した。分析では外資割合による直接効果に加えて、産業内および川上・川下産業に存在する外資系企業からのスピルオーバー効果について検証した。環境マネジメントシステムの採用など5つの指標で測った個別企業の環境への取り組みを被説明変数として推定を行ったところ、直接効果については環境への取り組みを促進する効果がみられた。また、産業内の水平的なスピルオーバーはおおむね負の効果で、川上・川下産業の外資系企業からの前方連関・後方連関のスピルオーバーはほとんど統計的に有意でないものの、貿易を行っていると正で有意な後方連関のスピルオーバー効果がみられるなど興味深い結果が得られた。さらに投資国別の分析も行ったところ、投資国により効果が異なることが明らかになった。