「稼ぐ力」の企業間格差

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2015年8月  15-J-047
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概要

日本企業の利益率―「稼ぐ力」―をいかに高めるかが政策現場での大きな関心事となっている。本稿は、最近10年間の日本企業のデータを使用し、利益率のクロスセクションでの分布について、事前の計画と事後的な実績とを比較しつつ観察事実を提示する。主な結果は以下の諸点である。第1に、平均利益率が低い不況期に利益率の企業間格差が拡大する傾向がある。第2に、大企業は中小企業に比べて利益率の平均値が高い一方企業間のばらつきが大きい。リスクとリターンのトレードオフの観点からは、中小企業のリスク回避傾向が強い可能性を示唆している。第3に、前年度末時点での計画利益率の企業間格差は比較的小さいが、時間の経過とともに計画利益率の平均値は下方修正され、同時に企業間格差が拡大していく傾向が見られる。すなわち、事前の利益率見通しには大きな不確実性が存在する。