デザイン活動は企業の生産性向上に貢献しているか ― 企活調査、民研調査を用いた分析 ―

執筆者 川上 淳之  (帝京大学) /枝村 一磨  (科学技術・学術政策研究所)
発行日/NO. 2015年7月  15-J-041
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究:国際比較及び公的部門の計測を中心として
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概要

本稿は「企業活動基本調査」と「民間企業の研究活動に関する調査」の個票データを用いて、企業のデザイン活動が全要素生産性に与える影響を検証した。分析を行う際には、異なる2つのアプローチをとった。1つは、「企業活動基本調査」のみを用いた意匠の保有の影響をみるもの。もう1つは「民間企業の研究活動に関する調査」とのマッチングデータを用いた具体的なデザインに係る活動がデザイン投資の効率性に与える影響をみるものである。

意匠を保有する企業は同時に技術に関する知的財産権である特許の保有もされる傾向にあり、意匠の保有と特許の保有が生産性に与える正の影響を高めることが確認された。一方で、マッチングデータを用いた分析からは、製品差別化を目的とするデザイン戦略よりも付加価値や独創性、ブランド向上を目的する場合の方が投資の効率性は高く、外部の人材の活用やデザイナーの育成も効果的であることが示された。これらの結果は、デザインの持つプロダクト・イノベーションの役割に注目するVerganti (2009)等のデザイン・ドリブン・イノベーションの枠組みを定量的に評価するものである。