専業主婦世帯の貧困:その実態と要因

執筆者 周 燕飛 (労働政策研究・研修機構)
発行日/NO. 2015年6月  15-J-034
研究プロジェクト 少子高齢化における家庭および家庭を取り巻く社会に関する経済分析
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概要

貧困ながらも専業主婦でいる子育て女性は、全国で50万人以上と推計される。では、なぜ夫の収入が貧困線以下にもかかわらず、妻が専業主婦でいる者がこれほど多いのか。回帰分析の結果、貧困専業主婦でいるのは、本人が直面している市場賃金が低く、子どもの年齢が低いため留保賃金(または家庭での時間的価値)が相対的に高いことに起因するものである。一方、保育所の不足などの外部要因も一因となっていることがわかった。

調査では、約9割の貧困専業主婦は遅かれ早かれ働きたいと考えており、こうした働く意欲のある女性が働けるようにその就業障壁の除去がいま求められている。低収入家庭の妻の就業行動は、自分の市場賃金、保育所の不足状況および親による世話的援助の有無により敏感に反応していることから、無料職業訓練の提供、専門資格取得への支援、保育所への優先的入所、親との同居または近居を支援する政策は、彼女たちの就労促進につながるであろう。