企業統治制度改革の視点:ハイブリッドな構造のファインチューニングと劣位の均衡からの脱出に向けて

執筆者 宮島 英昭  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年6月  15-P-011
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア:企業成長・価値創造と企業統治
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概要

アベノミクスの一環として日本の企業統治を巡る議論が高まっている。企業統治の強化は、直接には企業の財務政策の改善、経営効率の向上をもたらし、これが対日投資の拡大を通じて、株式市場の活性化、資金調達の促進、M&Aの活発化などの好循環を引き出すと期待されている。独立取締役の導入を促進する改正会社法が成立し、機関投資家に投資先企業との積極的対話を求める日本版スチュワードシップ・コードが運用段階に入った。さらに、日本版コーポレートガバナンス・コードも6月から実施段階に入った。本稿の課題は、これまでの実証分析の成果を利用しながら、今後の企業統治構造改革における焦点を明示することにある。本稿では、まず、銀行危機以降の日本の企業統治構造の変化を国際比較の観点から整理し、統治構造改革における日本企業の課題が、従業員のコミットメントを促す制度を維持しつつ、株主の利益を引き上げるようにリバランスを図る点にあることを示す。次に、焦点となる企業統治の強化とパフォーマンスの関係について、内外の研究を概観する。特に、株式所有構造、企業統治制度、企業行動、企業パフォーマンスの相互関係が焦点である。最後に、現在の争点である、機関投資家の役割、株式相互持合いの規制、取締役会の機関設計(社外取締役の複数選任制)を中心に、今後の企業統治改革の方向について検討する。