研究開発税額控除は研究開発投資を促進するか?―資本コストと内部資金を通じた効果の検証―

執筆者 細野 薫  (ファカルティフェロー) /布袋 正樹  (関西国際大学) /宮川 大介  (一橋大学)
発行日/NO. 2015年6月  15-J-030
研究プロジェクト 日本企業の競争力:生産性変動の原因と影響
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概要

研究開発税額控除制度の利用は2つのチャネルを通じて研究開発投資を促進する。具体的には、現在における研究開発税額控除の利用は、資本コストの低下を通じて研究開発投資を促進する一方で、過去における研究開発税額控除の利用は、内部資金の増加による資金制約の緩和を通じて研究開発投資を促進する。本研究では、こうした「2つチャネル」という観点から、日本の研究開発税額控除制度を実証的に評価する。得られた結果は以下の通りである。第1に、当期における研究開発税額控除の利用は、外部資金依存度が低い産業に属する企業においては大きな投資促進効果をもたらすが、外部資金依存度が高い産業に属する企業においては、外部資金の利用に伴うエージェンシーコストの増加によりその効果が一部相殺されてしまう。第2に、外部資金依存度が高い産業に属する企業において、前期における税額控除の利用は内部資金を有意に増加させず、研究開発投資を促進することにつながっていない。これらの結果は、資金制約に直面している企業に関しては、研究開発税額控除の投資促進効果が限定的であることを示している。