中国の鉄道物流構造変化に関する実証分析

執筆者 孟 健軍  (客員研究員) /張 紅咏  (研究員)
発行日/NO. 2015年5月  15-J-024
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概要

広大な国土を有する中国では、広域レベルの物流基本構造および物流体系形成について最も重要なのは鉄道運輸である。しかし、1949年以来、国家戦略のもとに半軍事的な組織である鉄道省として管理された鉄道物流は集権的統制下に置かれて身動きができなかった。1978年の改革・開放以降、地域経済が活性化することによって経済資源の流動化が開始され、鉄道物流は市場メカニズムに従って地域経済の一体化、即ち統一的な国内市場に向けて始動した。2013年3月に鉄道省を解体し、企業組織である中国鉄道総公司が正式に発足し、国家が独占してきた鉄道の経営権・所有権および鉄道建設などの市場を民営企業および地方政府にも全面的に開放し、鉄道物流が漸く市場化されている。

本稿は、改革・開放期の鉄道物流の重要性に関心を寄せ、1990年から2012年までの地域間の鉄道貨物輸送量を利用して重力モデルで実証分析を行い、中国の鉄道物流構造変化と市場化による地域経済一体化との関係を解明することが目的である。このような鉄道物流の実証分析を通じて以下の重要な観察事実が得られた。鉄道物流構造変化は、地域間の物理距離に影響されているものの、各地域の経済成長に伴い、長距離移動が開始し、つまり地域経済一体化に向かっている。とりわけ、到着地の第二次産業の需要面成長は鉄道物流構造変化に大きく寄与している。同時に、鉄道物流構造変化は依然として各地域の国有経済の影響下にあることも見逃せない。