多様な正社員のスキルと生活満足度に関する実証分析

執筆者 久米 功一  (リクルートワークス研究所) /鶴 光太郎  (ファカルティフェロー) /戸田 淳仁  (リクルートワークス研究所)
発行日/NO. 2015年5月  15-J-020
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

業務内容や勤務地を限定された正社員(いわゆる限定正社員) の活用は、家庭生活との両立や非正社員から正社員への転換の足掛かりとして期待されている。本稿では、RIETIが行った「多様化する正規・非正規労働者の就業行動と意識に関する調査」(平成24年度)をもとに、正社員の多様な働き方、スキル、満足度の実態および関係を明らかにするとともに、その経済厚生を評価した。限定的な働き方がスキルの成熟度を低下させる場合があるとともに、スキルを高める機会がないことは、仕事満足度と生活満足度の両方を毀損して、その大きさ(金銭換算した補償額)はそれぞれ1233.3円/時(平均時給の72.4%)、808円/時(同47.4%)と残業や異動・転勤のある働き方に対する補償額の2~3倍にもなり、デメリットが大きいことがわかった。また、残業や異動・転勤といった、生活面での変更を余儀なくされる働き方は、男性よりも女性の、仕事よりも生活満足度をより損ねることが明らかになった。これらの結果は、限定正社員の普及に際しては同時にスキルを高める機会を増やすことが重要であり、限定的な働き方のメリットが相対的に大きい女性への普及も政策課題として強調すべきである。