子育ての方法と労働市場の評価-日本における実証研究-

執筆者 西村 和雄 (ファカルティフェロー) /八木 匡 (同志社大学)
発行日/NO. 2015年5月  15-J-018
研究プロジェクト 日本経済社会の活力回復のための基礎的研究
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概要

Chua (2011)は、中国に多いと言われる子育てと西洋に多いと言われる子育て方法の比較をすることで、厳格な子育ては子供の成功に役立つとして問題提起した。親の子育てのあり方が子供のパフォーマンスに与える影響に関する研究は、Kim (2013)が実証的に"Tiger Mother"と呼ばれる親による子育ての優位性を否定したことによって、更に注目を集めることなった。

本稿の研究では、上記の研究で提示された問題に関連して、日本のデータを用い、子育ての方法が子どもの将来に与える影響について、就業後の所得を代理変数として分析を進める。

我々は、子供時代の親との関係に関する16項目の質問の回答の主因子分析を行い、「関心」「共感」「自立」の3つを因子として抽出した。その上で、自立教育の程度、愛情認知の程度、関心の程度をもとにして、子育ての方法を、支援型、厳格型(タイガー)、迎合型、放任型、虐待型に分類し、それぞれの子育てを受けたグループの平均所得を比較することによって、子育てのあり方が、労働市場での評価にどのような影響を与えるかを明らかにする。