日本の自動車産業における完成車メーカーと一次サプライヤーの取引構造とその変化

執筆者 郷古 浩道  ((株)豊田中央研究所)
発行日/NO. 2015年4月  15-J-014
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

1989年から2010年までの、国内における完成車メーカーと一次サプライヤーの取引について分析し、以下のことが分かった。

・取引のオープン化は、期間を通じて少しずつ進んでいる。2000年代においてその要因となっているのは、完成車メーカーが取引先を増やしていることではなくサプライヤーが取引先を増やしていることである。
・オープン化よりもかなり早いペースで、完成車メーカーと既存のサプライヤーの取引関係の「組み換え」が起こっている。
・長期的に取引を維持している部品、長期的に取引関係を維持しているサプライヤーは依然として多く存在する。他方、数年程度の短期間の取引をするサプライヤーも期間を通じて一定程度存在しており、部品別に頻繁に取引先を見直す傾向が近年強まっている。
・完成車メーカーによって、部品調達先の数やサプライヤーとの取引を継続する期間が異なる。特に近年、一部の完成車メーカーで部品別に取引先を頻繁に変更する傾向が強まっている。完成車メーカーの戦略の違いが、取引関係に表れていることが示唆される。

電子化や部品の共通化、標準化の進展は自動車産業の取引構造の変化を引き起こす可能性があるが、現状では、取引関係が変化している部品・サプライヤーとそうではない部品・サプライヤーが混在した状況になっている。また、完成車メーカーによって取引関係のあり方が異なる場合も多い。