日本語タイトル:貿易自由化のもとでの越境汚染と市場規模

Trade Liberalisation, Transboundary Pollution and Market Size

執筆者 Rikard FORSLID  (Stockholm University) /大久保 敏弘  (慶応義塾大学) /Mark SANCTUARY  (Stockholm School of Economics)
発行日/NO. 2015年4月  15-E-041
研究プロジェクト 複雑化するグローバリゼーションのもとでの貿易・産業政策の分析
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概要

本論文は新貿易理論(独占的競争モデル)のフレームワークを用いて、貿易の自由化(輸送費の低下)がどのように汚染(企業の生産による排出)に影響するのかを理論モデルにより分析した。まず、非対称な市場規模の2国間で非対称な排出税を外生的に与え自国市場効果との関連に注目して、大きな市場が高い税率をつけつつも、貿易自由化の中で企業数がより多くなることを示し、世界全体の汚染は減ることが分かった。次に税率を内生化した場合を分析した。大きな市場では企業数をキープしつつ、より高い税率をつけることが分かった。つまり、汚染回避仮説とは対照的な結果である。しかしながら、2国間で税率の切り下げ競争が起こるため、貿易自由化とともに世界の汚染量は増加することになる。さらに税の協調の場合を分析し、排出量を減らすことができることが分かった。排出課税の国際的な協調の重要性を示した。これらの理論モデルの結果から実証研究へのアプリケーションとして、貿易と環境あるいは汚染回避仮説の研究において、市場サイズ、製品差別化の程度、汚染削減投資、貿易費用(輸送費、距離)は重要な変数となるだろう。



概要(英語)

This paper uses a monopolistic competitive framework with many sectors to study the impact of trade liberalization on local and global emissions. We focus on the interplay of the pollution haven effect and the home market effect and show how a large-market advantage can counterbalance a high emission tax, implying that trade liberalization leads to lower global emissions. Generally, our results suggest that relative market size, the level of trade costs, the ease of abatement, and the degree of product differentiation are relevant variables for empirical studies on trade and pollution.