退職後の消費支出の低下についての一考察

執筆者 暮石 渉 (国立社会保障・人口問題研究所) /殷 婷 (研究員)
発行日/NO. 2015年1月  15-J-001
研究プロジェクト 少子高齢化における家庭および家庭を取り巻く社会に関する経済分析
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概要

本研究は、退職前後の消費の変化に対してHurst (2008) が指摘した2つの事実((i)退職とともに低下するのは仕事に関連した支出と食費(家での食事および外食)に限られる、(ii)実際の食料摂取は退職の前後で一定している)が日本においても成り立っているかを、「くらしと健康の調査」を用い検証した。特に同調査において詳細に尋ねられている食費、外食費、生活費に関する質問と家事や日用品の買い物といった生活時間に関する質問に注目する。分析の結果、世帯主の退職は外食費を約17%低下させるが、外食以外の食費や生活費に対しては影響を及ぼさないことがわかった。これは、第1の事実が部分的に成り立っていることを示している。また、平日に家事・日用品の買物・子どもや孫の世話に費やす時間の約25%の上昇につながっている、ということがわかった。退職とともに市場での購入物から時間へとインプットを代替させていることが示唆され、これは第2の事実と整合的である。