特許出願公開のオープンイノベーション効果:インクジェット特許の分析

執筆者 絹川 真哉  (駒澤大学)
発行日/NO. 2014年8月  14-J-039
研究プロジェクト 日本型オープンイノベーションに関する実証研究
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概要

企業が特許出願を行う目的は、発明の権利化だけではない。競合他社による技術の権利化阻止を目的とする防衛出願も、特許出願には多く含まれる。特許査定率を下げる一因とも見られる防衛出願ではあるが、日本国内のすべての特許出願は出願後18カ月後に公開されるため、たとえ競合企業などの特許取得を阻むための出願であっても、直接的な競争関係のない第三者にとっては有益な技術情報となりうる。そして、このような外部効果は、オープンイノベーションの進展とともに異分野技術に波及している可能性がある。本論文は、「インクジェット記録方法およびその記録媒体」特許出願データをもとに、インクジェット技術特許出願が、審査請求されなかった出願も含め、異分野技術の特許出願に多く引用されていることを明らかにする。さらに本論文は、企業の出願行動に影響しうる2つの政策変更、進歩性基準の低下と審査請求期間短縮の効果を調べた。前者には出願全体の増加効果、後者には審査未請求出願および自己引用出願の減少効果が見られ、後者が前者を上回ったことが示された。