奨学金の制度変更が進学行動に与える影響

執筆者 佐野 晋平  (千葉大学) /川本 貴哲  (百五銀行)
発行日/NO. 2014年7月  14-J-037
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本稿は日本学生支援機構奨学金の制度変更により、新たに奨学金を受けることが可能となった層に注目し、制度変更に直面した高校卒業者の大学進学確率が上昇したかどうかを検証した。1999年に日本学生支援機構の奨学金制度が変更されたが、その変更の1つに奨学金申請のための収入基準額の変更がある。具体的には、それまで生活保護地域1級地に相当するA級地の基準額は、2級地以下に相当するB級地の基準額より高く設定されていたが、制度変更により級地区分が廃止され、B級地の家計のみ進学費用が下がる状況が生まれた。この状況を利用し、1996-2003年の市町村データを用いDifference in Differencesにより制度変更が進学に与える効果を分析した。また、同じ級地区分内であっても所得水準により制度変更の影響が異なる状況を利用し、回答者の過去の居住地情報が入手できる個票データを用いてTriple Differenceを実施した。推計結果によると、制度変更に影響を受け、受給資格が拡大したグループの短大・大学への進学確率は上昇するが、その効果は制度変更直後に限定されることが示された。