中小企業における輸出と企業力の強化:工業統計ミクロデータを用いた輸出の学習効果の検証

執筆者 栗田 匡相  (関西学院大学)
発行日/NO. 2014年5月  14-J-034
研究プロジェクト グローバル化と災害リスク下で成長を持続する日本の経済空間構造とサプライチェーンに関する研究
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概要

少子高齢化による国内需要の低下とアジアを始めとした新興諸国の台頭、さらには、地方経済の低迷や震災の影響によって、国内大企業の海外進出は加速している。他方で、大企業依存の下請けビジネスを中心としたわが国の中小企業の生産活動は、そのビジネスモデルの変更を余儀なくされているといってよい。こうした状況下で本研究は、中小企業の海外展開、具体的には輸出を通じて、たとえばTFP(全要素生産性)で見た生産性の向上といった当該輸出企業の企業力強化が達成されてきたのかどうかを、2002年から2008年までの7年分の工業統計ミクロデータを用いて検証した。分析の結果からは、生産性の改善という点では輸出による学習効果は認められるものの、大規模企業においては生産性向上効果が輸出開始後に大きく現れるが、小規模企業の生産性向上は徐々に改善していくなど、産業の別、企業規模や企業立地の違いから、その効果の程度や効果が生じるまでの時間的ラグについては一様ではないことがわかった。