日本語タイトル:「少子化」と「母親の労働参加」は矛盾する政策か

Fertility and Maternal Labor Supply in Japan: Conflicting policy goals?

執筆者 Andrew S. GRIFFEN  (東京大学) /中室 牧子  (慶應義塾大学) /乾 友彦  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2014年4月  14-E-016
研究プロジェクト サービス産業に対する経済分析:生産性・経済厚生・政策評価
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概要

安倍政権は成長戦略の中で、雇用制度改革・人材力の強化の柱として、少子化対策とともに、女性が労働市場で活躍できる機会を拡大することを目標として掲げている。しかし出産とともに離職する母親は多く、こうした政策を同時に両立させるのは極めて難しい。本研究では、厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」の個票データを用いて、出生が母親の労働参加に与える因果的効果を推計することを試みた。具体的には、外生的な出生と考えられる双生児の出現を子どもの出生数の操作変数として用いた。実証分析の結果、追加的な出生は短期的には母親の労働供給に負の因果的効果を持つが、出生した子どもが学齢期に差し掛かる時期を境に徐々に正に転じはじめ、長期的には正の効果を持つことが明らかになった。これは、子どもが中学校に入学するまで、追加出生が母親の労働供給に一貫して負の因果効果を持つことが明らかになっている米国の結果とは大きく異なっている。これには日米両国における母親の効用関数-特に子どもの年齢と子育て費用に関して-の違いが影響していると考えられる。以上の結果は、安倍政権下における少子化対策と、(子育て中の)女性の労働市場での活躍という2つの政策が決して矛盾する政策ではないということを意味している。



概要(英語)

Using panel data on Japanese mothers, this paper estimates the impact of fertility on maternal labor supply using twins as an instrument for the total number of children. We find that having twins actually has a longer term positive impact on maternal labor force participation. To understand this result, we present evidence that spacing effects and the cost of children are particularly salient in Japan and differ in important ways between twins and non-twin families of the same size. Implications for fertility and labor supply policy in Japan are discussed.