サービス交渉とプルリ合意-TISAとセクターアプローチ

執筆者 中富 道隆  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2014年2月  14-P-002
研究プロジェクト 国際投資法の現代的課題
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概要

1)WTOサービス協定(GATS)交渉は、ラウンドの機能不全、フリーライドへの懸念、FTAの展開を原因として、97年の金融・テレコミサービス合意以降大きな成果を生んでいない。その中で、FTAと並びサービス自由化・ルール作りの有力な枠組みとして提唱されているのがTISA(Trade in Services Agreement)である。

2)TISAは、ハイレベルのサービス自由化とルール作りを目指す有志国間の複数国間(プルリ)イニシアティブであり、GATS交渉が低迷する中で、直接グローバルなルール作りにつながるポテンシャルのある唯一の枠組みであること、日本にとって新しいビジネスチャンスを作り出す基礎となる可能性が高い枠組みであること、個別のメガFTAにおいて日本の国益を守るためのレバレッジとなることから日本として本格的な取り組みが必要である。

3)TISAの法的構成は、今後の議論であるが、FTAと位置づけることは、GATS5条の要件の恣意的解釈になりかねないこと、途上国を入れたグローバルな枠組みへの道筋が不明であること、経済厚生上も問題があること、サービス規制の横断的性格に沿わないことから問題がある。TISAは、金融・テレコミ合意の例に倣い、クリティカルマスを構成する国の参加実現とメリットの非参加国への均てんを基礎として考えることが、グローバルなルール作りの観点から望ましい。

4)金融・テレコミ合意に代表されるセクター合意は、分野の特性に対応してGATSを発展させることの出来る有力なアプローチであり、グローバルなルール作りを目指して、今後TISAの枠組みの中で、小売・流通、製造業関連サービス、文化関連サービス、環境関連サービス、越境データ流通など、日本が積極的具体的に提案していくことが期待される。

※本稿の英語版ポリシー・ディスカッション・ペーパー:14-P-023