国際投資協定における「一般的例外規定」について

執筆者 森 肇志  (東京大学) /小寺 彰  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2014年1月  14-J-007
研究プロジェクト 国際投資法の現代的課題
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概要

国際投資協定(IIA)上の義務に対する例外・留保規定の中には「一般的例外規定」と呼ばれるものがあり、日本が締結するIIAでも活用されているが、その一般的な定義は明確ではなく、しばしば異なる意味で用いられている。本稿は、この「一般的例外規定」について、まずその概念を整理した上で、投資家保護と国内規制権限とのバランスの確保という観点から検討した。その結果、以下の結論と政策的含意が得られた。(1)「一般的例外規定」は、IIA上の義務全体に係る例外(一般的例外)を指すものとして用いられることが多いが、日本が締結するIIAに規定される「一般的例外規定」は、GATT第20条および/あるいはGATS第14条の「一般的例外」を準用するという点で特徴的である(GATT/GATS型一般的例外規定)。(2)実体規定たる公正衡平待遇義務(FET)違反がGATT/GATS型一般的例外によって正当化されるのは、FETが国際慣習法上の最低基準以上のものを意味する場合である。(3)したがって、日本政府としては、一般的例外概念をあらためて整理すること、GATT/GATS型一般的例外規定についてもその例外事由の範囲を再検討すること、GATT/GATS型一般的例外を規定する際には実体上の義務の規定の仕方と連動させること、が求められる。