投資協定仲裁における非金銭的救済

執筆者 西村 弓  (東京大学) /小寺 彰  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2014年1月  14-J-006
研究プロジェクト 国際投資法の現代的課題
ダウンロード/関連リンク

概要

アルゼンチンに対する一連の仲裁提起を契機として、投資仲裁が高額な賠償を国家に命ずることが、とりわけ経済的困難にある国家の政策策定に対して萎縮効果をもたらすことの正当性について疑問が呈され、賠償に代えて措置の取消などの救済手段が選ばれるべきではないかという考え方が示されている。他方で、国際裁判・仲裁において国内措置の取消や無効を宣言し、または特定的な国内措置を命ずることは国家主権への干渉に当たり許容されないという相容れない考え方が示されることも多い。投資仲裁における非金銭的救済の可能性をどのように評価すればよいのか。関連する裁判・仲裁例などを検討した結果、本稿は、(1)引証基準とされる国家間紛争において、一定の非金銭的救済は命ぜられ得ること、(2)国家の政策決定権の確保は、取消などによって害される被申立国の国内公益と投資家が得る利益との比較考量を通して図られうるため、投資仲裁においても非金銭的救済の余地を残すことが合理的であること、を示した。