JSTARを使った抑うつ度と他の指標との関係の検証

執筆者 関沢 洋一  (上席研究員) /吉武 尚美  (お茶の水女子大学) /後藤 康雄  (上席研究員)
発行日/NO. 2013年12月  13-J-077
研究プロジェクト 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究
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概要

本研究では、RIETI、一橋大学および東京大学の各研究成果である「くらしと健康の調査(JSTAR)」のデータを使って、50代から70代の中高齢者について、基本属性や経済的社会的地位や身体的健康の状態が、抑うつ度(うつっぽさ)とどのように関係しているかを検証した。抑うつ度の得点は、CES-D (The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を使った。

先行研究と特に異なるユニークな結果となった点として、世帯収入・預金額と抑うつ度の関係がある。世帯収入と預金額の大小に応じて4つの層に分けて抑うつ度との関係を検証したところ、他の変数を制御しない場合には、男女ともに、世帯収入が最も少ない層(214万円以下)、預金額が最も少ない層(100万円以下)に比べて、それ以上の層は抑うつ度が低い傾向があった。

ところが、重回帰分析によって、年齢・学歴・就労状況などの諸変量を制御すると、男女間で異なる結果となった。世帯収入については、男性では、世帯収入が最も低い層(214万円以下)に比べて、それ以上の層は抑うつ度が低い傾向があるのに対して、女性の場合、男性ほど明瞭ではない。これに対して、預金額については、世帯収入とは反対に、男性では抑うつ度と有意な関係が存在しないのに対して、女性では、預金額が最も少ない層(預金額100万円以下)に比べて、預金額が100万円~400万円以下の層では有意な抑うつ度の差はないが、それ以上の層になると、抑うつ度が有意に低下している。