心理社会的ストレス対処のための筆記表現法の応用可能性の検討

執筆者 大森 美香  (お茶の水女子大学)
発行日/NO. 2013年11月  13-J-076
研究プロジェクト 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究
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概要

心理社会的ストレスは、学校教育から産業場面にいたるあらゆる場面のメンタルヘルスの課題として広く関心を集めている。心理的ストレスは、うつなど心理的問題にとどまらず、喫煙や飲酒など健康を害する行動の増加を通して、身体面での問題にも関連するとされる。エビデンスにもとづいた、有効なストレス対処の方法を確立することは、有効なヘルスケアの提供のためにも重要な課題である。本稿は、心理社会的ストレスの対処のための新たな方法を検討することを目的とする。この目的を達成するため、はじめに従来の対面型心理療法について概観しその課題を考察する。次に、新たな心理的援助の一方策として、Pennebakerら (1986)により提唱された筆記表現法をとりあげ、その有用性の予備的検証を行う。具体的には、進学というライフイベントを経たばかりの大学新入生24名を対象に筆記表現法を実施し、その効果を検証した。筆記開示群、統制開示群、統制群を設け、筆記開示群、統制開示群に3日間の筆記表現法を実施してもらった。筆記前後の気分変化は、3日目でポジティブな変化量の増大がみられたが、統計的有意性はみられなかった。また、筆記表現法実施前後の抑うつ、不安、怒りの変化に統計的な有意な差はみられなかった。筆記表現法の今後の課題について考察を行った。