東日本大震災によるサプライチェーン寸断効果と自動車産業クラスターによる復興分析:地域CGEモデルを用いて

執筆者 徳永 澄憲  (筑波大学) /沖山 充  ((株)現代文化研究所) /阿久根 優子  (麗澤大学)
発行日/NO. 2013年9月  13-J-068
研究プロジェクト グローバル化と災害リスク下で成長を持続する日本の経済空間構造とサプライチェーンに関する研究
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概要

本稿の目的は、被災地域とその他地域の2地域間CGEモデルを使って、第1に東日本大震災直後に発生した被災地域とその他地域の「サプライチェーンの寸断」という「負のサプライショック」について分析することであり、第2に現在被災地域で自動車産業の集積がみられる中、復興政策の一環として被災地域での自動車産業クラスター形成に向けてどのような施策が望ましいのかについて分析することである。

まず、「サプライチェーン寸断」の分析からわかったことは、被災地域の生産量の減少が倍以上になったとしても、その部品の汎用性が高ければ、その他地域の生産へのマイナスの影響度は同程度になることがわかった。一方、被災地の自動車生産ピラミッドの下部に位置するような製造業が生産する素材・中間財の製品がその他地域から調達しにくいものであればあるほど、その産業の生産がより減少すれば、被災地域の自動車部品や自動車製造の生産をより減少させることがわかった。

次に、被災地域で自動車産業クラスター形成のための施策として、被災地域の地方政府への財政移転の一部を使って自動車産業の生産ピラミッドを構成する産業に対して追加的に補助金を付与するシミュレーションを実施すると、この施策が継続している期間において、被災地域の自動車産業を成長・発展させる効果が大きいばかりではなく、被災地域の地域経済や域内生産やその他地域の自動車産業にもプラスの波及効果をもたらす。しかし、その期間が終了した時点で自動車産業の生産量は大きく減少し、それ以降は低迷するなど、この施策だけでは自律的な成長パターンに結び付かないことがわかった。そのため、今後25年間続く復興特別税の税収の一部を被災地域の法人税減税措置に振り向けることができれば、被災地域の自動車産業クラスターを継続的に発展する原動力になり、かつ被災地域の地域経済の発展に貢献することが期待される。