国際輸送部門における環境政策に関する経済分析

執筆者 寳多 康弘  (南山大学)
発行日/NO. 2013年9月  13-J-061
研究プロジェクト 大震災後の環境・エネルギー・資源戦略に関わる経済分析
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概要

本稿の目的は、国際輸送サービス部門のある2国2財の貿易一般均衡モデルを構築して、国際輸送に対する環境規制の効果を分析することである。本モデルで、各国政府は、財セクターとは別に、国際輸送サービス部門に対して独自の排出枠を設定している。この仮定は、国際輸送からの排出は、その帰属先の特定が困難なため、既存の国際的な環境規制の枠組み(京都議定書)の規制対象外となっており、国際輸送について独自の環境規制が実施・検討されている事実に即しており、妥当である。本稿の主な結果は2つある。第1に、2国の国際輸送サービス部門の間での国際排出量取引によって、排出枠の売買価格に依存せず、国際輸送サービス輸入国は得する。しかし、国際輸送サービス輸出国は、排出枠の売買自体からの利益をすべて独り占めしたとしても、国際排出量取引によって損失を被るかもしれない。第2に、自発的にある国が国際輸送サービ部門の排出枠を削減するとき、その国の国際輸送サービス部門は縮小するにもかかわらず、交易条件効果を通じて、厚生は上がるかもしれない。当初、国際輸送に対する環境規制が緩いならば、自発的な規制強化によって、両国の厚生がともに改善するかもしれない。