メガFTAの時代のグローバルバリューチェーンへの包括的対応―通商戦略の観点から

執筆者 中富 道隆  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2013年8月  13-P-016
研究プロジェクト 国際投資法の現代的課題
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概要

最近、グローバルバリューチェーン(GVC)についての議論が国際的に活発化している。経済の相互依存の実態を明確にした付加価値分析の進展、WTO・ドーハラウンドの低迷、メガFTAの現出、Behind-the-border measuresやサービス貿易への関心の高まりなどを背景とし、GVCの課題に対応できない通商システムへの強い不満と変化への期待が議論活発化の原因である。

GVC円滑化への「包括的」対応には、メガFTAの他に、筆者提案の国際サプライチェーン協定(ISCA)のような複数イッシューのプルリ協定が有効であり、政府と産業界との連携が実現の核となる。

GVCに係るルール作りの当面の主役であるメガFTAは、自動的に理想的かつグローバルな通商システムを保証するものではなく、消化不能のルールのスパゲティーボウルを生む危険がある。

その回避には、「世界解」を目指した政策展開、GVCの思想、イッシューベースの国際ルール作りの思想(一例がISCA)、透明性と情報共有などが不可欠である。

これらを念頭に置いたブレない「統一軸」の形成、提案と発信が、日本には強く期待されている。