労働法の新たな理論的潮流と政策的アプローチ

執筆者 水町 勇一郎  (東京大学社会科学研究所)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-031
研究プロジェクト 労働市場制度改革
ダウンロード/関連リンク

概要

労働法は、現在、新たな変革のステージに立っている。この世界的な労働法の変革の動きには、それを根底で支える理論的基盤が存在し、その理論に基礎づけられて展開されている新たな労働法政策の動きには、ある程度共通した性格と方向性を見出すことができる。本稿では、まず、現在の労働法の変革の根底にある3つの新たな法理論(大陸ヨーロッパの手続的規制理論、アメリカの構造的アプローチ、イギリスを中心とした潜在能力アプローチ)について考察を加え、これらの法理論に共通する基盤を探り出す。そのうえで、この理論的基盤に立って今日世界的に展開されている労働法の新たな政策的方向性(就労促進、差別禁止、労働法・社会保障法・税制の一体化)について論じる。最後に、以上の理論的・政策的な考察を踏まえて、労働法改革の鍵となる新たな概念(インセンティブ、内省、総合)を抽出し、日本の労働法政策のあり方への示唆を明らかにする。