絆が災害に対して強靭な企業をつくる-東日本大震災からの教訓-

執筆者 戸堂 康之  (ファカルティフェロー) /中島 賢太郎  (東北大学) /Petr MATOUS  (東京大学)
発行日/NO. 2013年4月  13-P-006
研究プロジェクト 日本経済の創生と貿易・直接投資の研究
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概要

本研究は、東日本大震災の被災地における企業を対象とした調査によるデータを用いて、大災害に対して強靭な企業やサプライ・チェーン・ネットワークのあり方について分析した。震災時に、サプライ・チェーンによって直接・間接につながった企業が被害を受けることで、被害が軽かった企業や被災地外の企業でさえもが操業停止に至った例は多い。反面、サプライ・チェーンを通じて多様なつながりを持つことで、震災後に取引相手を変更したり、取引先から支援を受けたりすることで、被災地企業の復旧が早まった例もある。本研究は、企業が取引する被災地域外の取引先企業数が多いほど操業再開が早くなり、被災地域内の取引先企業数が多いほど中期的な売上高の成長率が高くなる傾向にあったことを見出した。つまり、上記の復旧に対するサプライ・チェーンのプラスの効果は、マイナスの効果を上回っていたといえる。したがって、本研究の分析によって、サプライ・チェーンを通じた企業ネットワークを拡大することで、企業は災害に対してむしろ強靭となると結論づけることができる。