最低賃金の決定過程と生活保護基準の検証

執筆者 玉田 桂子  (福岡大学) /森 知晴  (大阪大学 / 日本学術振興会)
発行日/NO. 2013年3月  13-J-013
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本論文では、最低賃金制度の歴史の概観、最低賃金の目安額、引き上げ額の決定要因についての分析を行い、さらに生活扶助基準が消費実態をどの程度反映しているのかについての分析を行った。分析の結果、目安額は有効求人倍率の影響を受けていることが示された。目安額決定に際しての参考資料とされている『賃金改定状況調査』に示された賃金上昇率などは目安額に影響を与えていなかった。引き上げ額は、目安額におおむね従っていることが明らかになった。中央最低賃金審議会が示す目安額は参考資料であり、地方最低賃金審議会に対して強制力を持っていないが、目安額が大きな役割を果たしていることが分かった。また、消費支出額、賃金上昇率、通常の事業の支払い能力に関する変数は引き上げ額に影響を与えないが、失業率は引き上げ額に負の影響を与えることが示された。生活扶助基準については、消費者物価地域差指数が高くなると都道府県単位で再計算された生活扶助基準が高くなることが示された。消費支出や年収第1・五分位が影響を与えているという仮説は支持されなかった。