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ワークライフバランスに対する賃金プレミアムの検証

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執筆者黒田 祥子  (早稲田大学)
山本 勲  (慶應義塾大学)
発行日/NO.2013年02月  13-J-004
研究プロジェクト労働市場制度改革
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ノンテクニカルサマリー
Research Digest (DPワンポイント解説)

概要

本稿では、ワークライフバランス(WLB)施策と賃金との間に補償賃金仮説が成立するかを検証するため、施策の導入によって賃金がどの程度低く抑えられているかという負の賃金プレミアムを計測した。分析には、実際に観察されたデータと仮想質問形式のデータの2つのタイプの企業・従業員マッチデータを用いた。分析の結果、観察データにもとづく推計では、フレックスタイム制度を利用している男性従業員で補償賃金仮説が成立しており、最大で9%程度の負の賃金プレミアムが検出されることがわかった。一方、「仮に施策が導入されたならばいくらの賃下げが必要か」という仮想質問データにもとづく推計では、従業員側は「施策導入の代わりの賃下げは受け入れられない(0%の賃金プレミアム)」あるいは「10〜20%程度の賃下げなら受け入れる」とする回答が多かったのに対して、企業側は「導入は一切考えられない(-100%の賃金プレミアム)」という回答が圧倒的多数であった。日本でWLB施策が普及しない背景には、施策の導入を多大なコストと考えている企業が多く、従業員との認識に大きなギャップがあることが指摘できる。もっとも、ある程度の賃下げで施策を導入してもよいとする従業員と企業のみにサンプルを限定した場合には、フレックスタイム制度などの柔軟な働き方の賃金プレミアムは、従業員で-25%程度、企業側では-12%程度であった。つまり、企業は施策導入には1割程度の賃下げが必要と考えているが、労働者は平均で2割以上を引き下げてでも柔軟な働き方を希望しているといえる。これらの結果は、企業が労働者の潜在的なニーズをうまく汲みとることができれば、フレックスタイム制度などの導入により従業員の厚生を高めることができるだけでなく、人件費の大幅削減が実現可能となるケースもあることを示唆している。

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