成長に友好的な税・年金改革―マクロモデルによる効果試算―

執筆者 岩田 一政  (日本経済研究センター) /猿山 純夫  (日本経済研究センター)
発行日/NO. 2013年2月  13-J-001
研究プロジェクト 経済成長を損なわない財政再建策の検討
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概要

本論は、「成長に対して友好的な税・年金の抜本改革」として、基礎年金の税方式化と報酬比例部分の積立方式移行を柱とする3つの改革案を提案する。同時に、企業活力を高める観点から法人税減税の実施、中長期の財政中立を確保するために、毎年1%ずつ消費税率の引き上げの実施を提案する。

税・社会保障改革の議論はともすれば財源論に偏りがちであり、負担増を中心とした改革は経済を不安定にし、財政再建も困難にする恐れがある。本論は、経済の供給面改善を目指した改革実施により、成長と財政健全化の両立を図る試みである。

経済効果をマクロモデルで試算すると、公的年金の即時民営化を行うケースでは、年金保険料の廃止、法人税率の引き下げで、企業が設備投資や雇用・賃上げを積極化するため、実質国内総生産(GDP)が最大4%程度高まる。また、デフレ脱却も可能になり、消費者物価上昇率は2%程度となる。他方、年金民営化に伴う「二重の負担」を財政で肩代わりするため、政府債務残高は拡大する。

改革を基礎年金の税方式化にとどめる案では、GDPの引き上げ幅は1%程度になるが、政府債務はむしろ縮小し、経済成長と財政再建が同時に達成できる。現在の公的年金は保険料に見合った積み立てが行われておらず、保険料は事実上賃金を課税対象とする賃金税である。今後、高齢化の進展とともに現役世代の負担は今後一段と重くなる。世代間の不公平を是正し、働く若者が将来に希望を持てる公的年金制度の抜本的改革が求められている。