イノベーション創出に向けた「縁結び」と「絆の深化」:音楽産業の価値創造ネットワーク

執筆者 井上 達彦  (ファカルティフェロー) /永山 晋  (リサーチアシスタント)
発行日/NO. 2012年11月  12-J-035
研究プロジェクト 優れた中小企業(Excellent SMEs)の経営戦略と外部環境との相互作用に関する研究
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概要

本稿は、製品イノベーションの創出に向けた価値創造ネットワークについての実証研究である。新たなプレイヤーとの「縁結び」、あるいは既知のプレイヤーとの「絆の深化」が、価値の創造やイノベーションの創出にどのような影響を及ぼすのか。また、その「縁結び」や「絆の深化」は、どのような環境の変化によって引き起こされるのか。本稿では、クールジャパン政策などで近年注目を浴びているコンテンツ産業の中でも「先端事例」として位置づけられている音楽産業を分析対象としてネットワーク分析を試みた。

われわれが、とくに注目したのは、価値創造ネットワークが、それぞれが異なるビジネスモデルを持っている複数のプレイヤーから構成されているという点である。収益の上げ方が違うがゆえに、環境の不確実性に対して異なる関係構築が行われることが予想された。分析の結果、楽曲の制作関係と著作権分有の投資関係とでは、ビジネスモデルの違いもあって環境の不確実性に対して対照的な関係構築のパターンがとられることが明らかになった。また、製品イノベーションを引き起こすのは、制作関係の「縁結び」であること、そして価値創造を促すのは投資関係の「絆の深化」であることが示唆された。