執筆者 |
五十川 大也 (東京大学) /大橋 弘 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2012年10月 12-J-034 |
研究プロジェクト | 新しい産業政策に関わる基盤的研究 |
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概要
本論文ではプロダクト・イノベーションが生み出される動学的なプロセスを寡占市場における企業の利潤最大化の枠組みを用いてモデル化したうえで、イノベーションに係る政策の効果をわが国のデータを用いて定量的に評価することを目的とする。2006年から2008年までの企業レベルのデータを用いて構造推定を行ったところ、プロダクト・イノベーションには技術的な波及効果が存在し、その影響はイノベーションが活性化することを通じた競争激化による負の効果を上回っていることが明らかになった。そこで企業がイノベーション活動を行うのに要する固定費用に対する公的助成は社会厚生を増大させるが、構造推定の結果を用いてシミュレーションを行ったところ、その乗数効果は1.4程度となることが分かった。またシミュレーションの結果から、わが国における現状の公的助成は必ずしも効率的に付与されているとは言えず、公的助成を受けた企業のうち4割程度は、助成がなくともイノベーションを実施したであろうことが推測された。つまり本論文から、イノベーションの活性化に係る現行の公的助成のあり方について、効率化を行う余地が存在することが示唆される。