発明者から見た2000年代初頭の日本のイノベーション過程:イノベーション力強化への課題

執筆者 長岡 貞男  (ファカルティフェロー) /塚田 尚稔  (研究員) /大西 宏一郎  (大阪工業大学) /西村 陽一郎  (神奈川大学)
発行日/NO. 2012年9月  12-J-033
研究プロジェクト イノベーション過程とその制度インフラのマイクロデータによる研究
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概要

本報告書は、2010年から2011年にかけて実施した発明者サーベイの結果の概要を報告している。イノベーションの根幹は新たな知識の創造とその新活用であり、発明者サーベイはその過程の把握を目的としている。対象は日本特許庁と欧州特許庁に出願された、優先権主張年が2003年から2005年の発明である。欧州の学者との国際共同研究プロジェクトとして実施した。完全な回答は3306件(回収率は19.3%、未達はがきを母数から除くと23.2%)、部分回答を含めると5289件(回収率は30.9%)であり、日本の発明者の積極的な協力があって、欧米より回収率は高かった。

サーベイは質問内容として、発明者とその所属組織のプロファイル、発明者のモビリティー、発明プロセス(研究協力、知識源、研究競争など)、発明への動機および報酬、標準の活用と標準開発への参加、特許化の動機、特許の利用(自社利用、売却・ライセンス、スタートアップ)および特許群の価値、発明の進歩性と早期特許付与への需要をカバーしている。

サーベイの結果、学歴毎の発明活動 (特に論文博士と課程博士の差)、発明者による研究競争の事前の認識とその特徴、知識ストックとしての特許文献の重要性、発明およびその実施にリンクした発明者報酬の状況、特許権の譲渡とライセンス対象の特許の特徴、標準に依拠した発明や標準開発への参加状況やその効果、特許の「群」としての経済価値、発明の進歩性の水準毎の発明の利用状況や経済価値、そして早期審査への需要などについて新しい知見を得ることができた。

報告書では、日本の発明者からの回答を中心としつつ、日米欧の比較も適時含めて新サーベイの結果概要を述べるとともに、これを踏まえて、今後のイノベーション強化への政策的な課題等について述べている。