中小企業の労働生産性 —労働者数と労働生産性分布に見る高生産性中小企業—

執筆者 青山 秀明  (ファカルティフェロー) /家富 洋  (東京大学) /池田 裕一  (京都大学) /相馬 亘 (日本大学)/藤原 義久 (兵庫県立大学)/吉川 洋  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2012年7月  12-J-026
研究プロジェクト 中小企業のダイナミクス・環境エネルギー・成長
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概要

本研究は、企業数が100万規模の網羅的データを用いて、労働生産性の切り口から我が国における中小企業の実態を実証的に明らかにし、有効な政策の実現に資することを目的としている。現実の企業のもつ労働生産性は、決して新古典派経済学が期待する均衡的なものではなく、大きく広がって分布している。企業が抱える従業員数で大企業と中小企業を区別する。得られた労働生産性の分布は、中小企業が生産性の低い母体グループと少数の企業からなる高い生産性をもつ先導グループに分かれることを明らかにする。つまり、中小企業即生産性が低いと考えるのは短絡的である。製造業と非製造業について比較すると、これら2つの産業セクターに決定的な違いが見られる。製造業については、業種間で高生産性企業の出現確率は大きく変わらず、生産性の向上をもたらす技術革新が、産業のインキュベーターの役割を果たしている中小企業群の中で中立的に起こっていることがわかる。他方、非製造業については、経済を支えるべき主要業種(建設業、卸業、小売業)において確率的に見合う刷新的な生産性向上が著しく欠けている。