東北地域における再生可能エネルギー導入の経済効果:地域間産業連関表による太陽光発電・風力発電導入の分析

執筆者 石川 良文  (南山大学) /中村 良平  (ファカルティフェロー) /松本 明  (エックス都市研究所)
発行日/NO. 2012年7月  12-P-014
研究プロジェクト 持続可能な地域づくり:新たな産業集積と機能の分担
ダウンロード/関連リンク

概要

本論文は、震災被害が甚大であった東北地域(岩手、宮城、福島)において、太陽光発電・風力発電を導入した場合の地域経済リカバリー効果と二酸化炭素削減の金銭効果を、地域間産業連関表を拡張したシミュレーション分析によって考察する。分析方針としては、東北地域における再生可能エネルギー導入量の可能性を考慮し、復興再生のためのエネルギー政策シナリオ別に地域別の経済効果(生産額、所得誘発額)とCO2排出影響を同時に分析する。分析では、震災前の電力供給、産業構造をベースとして、震災後におけるこれからの電力供給の電源種と供給先をシナリオ別に設定し、その結果の差異から望ましい電力供給のあり方を検討する。福島県における原子力発電所の廃炉に伴う電力不足を火力発電、再生可能エネルギー(太陽光発電・風力発電)で補う場合の地域経済効果をシナリオ別に推計した。具体的には、どのシナリオにおいても同じ最終需要を与え、シナリオごとに推計された投入産出構造の下で生じるシナリオ別の経済効果を推計した。分析結果から、「全国での経済効果最大化優先か東北復興・格差是正優先か」、「経済全体への影響(生産波及額)を重視するか雇用者への影響(雇用者所得)を重視するか」等の点でトレードオフ関係があることが明らかとなった。すなわち、どのような形態(自地域消費型か関東移出型)で、どの程度の割合を東北地域に再生可能エネルギーを導入するのが望ましいかを考えるには、政策判断が必要となることが示唆された。そして、東北復興・格差是正の観点からは、基本的には関東移出型の方が優位となる結果が示された。一方で、自地域消費型であっても環境面での効果(CO2削減量)を環境価値化(クレジット化)することにより東北復興・格差是正に資する可能性があり、環境経済政策が地域格差是正に資する可能性が示唆された。