東日本大震災の被災地域への負の供給ショックと復興の経済波及効果に関する乗数分析-2地域間SAMを用いて-

執筆者 沖山 充  ((株)現代文化研究所) /徳永 澄憲  (筑波大学) /阿久根 優子  (麗澤大学)
発行日/NO. 2012年7月  12-J-024
研究プロジェクト 持続可能な地域づくり:新たな産業集積と機能の分担
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概要

本稿は、東日本大震災の経済的影響を分析したもので、震災による被災地域への負の供給ショックと今後復興に向けての経済波及効果を計測した。まず、今回の震災が主因となった被災地域の大幅な輸出の減少が、被災地域とその他地域の生産活動や家計などの部門にどのような影響をもたらしたかを明らかにした。この結果、被災地域で大幅な輸出減が1年間続くと想定すると、被災地域の生産は6.5兆円減少し、被災地域の世帯当たり家計所得は66.0万円の減少、その他地域でも世帯当たり40.3万円の減少になると試算された。次に、津波による農業被害や漁業被害がもたらした被災地域への影響の大きさを明らかにした。この結果、こうした被害が被災地域の生産活動を0.73%の減少、金額では0.5兆円の減少をもたらした。最後に、今後の被災地域の復興に向けてどのような財源を用いて所得移転が実施された場合、被災地域やその他地域への生産活動や家計等に対して効果的な経済波及効果をもたらすかを分析した。この結果、中央政府の歳出や国内間接税の税収の一部を充当するよりは、利子や配当金等からなる財産所得の一部を割り当てたことの方が、被災地域に効果的なプラス効果をもたらすのみならず、マイナス効果を受けるその他地域にとっても最小限に止まるという結果が得られた。