2020年全面的小康社会への展望

執筆者 孟 健軍  (客員研究員)
発行日/NO. 2012年4月  12-J-009
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概要

改革開放政策以降、中国の経済発展はさまざまな困難を克服しながらも、市場化された近代経済に変容してきた。この間、5億人の貧困問題を解決し新たな発展段階に入った。しかし、「先富論」という発展観に基づいた結果、10%を超える粗放な高成長によって経済格差を中心にさまざまな社会問題を抱えている。

これからの中国にとって、筆者は「共同富裕論」に基づいた2020年達成目標の「全面的小康社会」こそが、今後の経済発展に影響を与える重要なキーワードだと考えている。つまり民生を重視し、経済資源の合理的配分を実現することが今後の中国発展の基本になると思っている。

本稿では、こうした考え方を踏まえ、まず中国特有の「小康社会」という概念の整理を通じ、経済発展において「全面的小康社会」の建設がどのようなものかという点について分析する。次にそれがどのような統計指標によって測られるのか、そしてそれぞれの地域が、現時点でどのような発展段階の小康社会に達したかを実証的に考察する。さらに、全面的小康社会の建設を目指す際に、重点的に取り組まなければならない問題点とその解決策について検討する。最後に、全面的小康社会の将来を展望することにしたい。