貿易ネットワークにおけるインボイス通貨選択と為替リスク管理:「平成22年度日本企業海外現地法人アンケート調査」結果概要

執筆者 伊藤 隆敏  (ファカルティフェロー) /鯉渕 賢  (中央大学) /佐藤 清隆  (横浜国立大学) /清水 順子  (専修大学)
発行日/NO. 2011年11月  11-J-070
研究プロジェクト 為替レートのパススルーに関する研究
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概要

本論文は、2010年8月に日本企業の海外現地法人を対象として実施された「平成22年度日本企業海外現地法人アンケート調査」の回答結果をもとに、貿易建値通貨選択の特徴をファクトファインディングとしてまとめたものである。日本企業の貿易建値通貨における米ドル建てシェアの高さを説明する要因として、アジアを中心に展開する日本企業の生産ネットワークが重要な鍵となっているが、本調査結果は企業内貿易を中心とした海外生産・販売体制の確立がむしろ米ドル建て取引を促進する結果となっていることを強く示唆している。為替リスク管理については、大規模企業を除く多数の日本企業は「現地法人毎の各社分散型」為替リスク管理体制を採用しており、特にアジアにおいてその割合が高いことがわかった。世界経済が大きな転換点を迎えているこの時期に海外現地法人のインボイス通貨選択や為替リスク管理の実態を把握することは、アジアにおいて国際化を急ピッチで進める中国元の可能性と円の果たすべき役割に対して、日本企業の視座に立った政策提言を行う上で大きな意味を持つものと考えられる。