マネジメント・プラクティスの形成要因

執筆者 淺羽 茂  (学習院大学)
発行日/NO. 2011年6月  11-J-064
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究
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概要

本論文は、日本企業の組織管理、人的資源管理に関するインタビュー調査を用い、マネジメント・プラクティスの形成要因を調べた。その結果、製造業、サービス業といった業種に関わらず、外資による所有の影響を受けた企業ほどマネジメント・プラクティスのスコアが高いことが見出され、対日直接投資の促進が日本企業のマネジメント・プラクティスの向上に資することが示唆された。さらに、競争が激しいほど、企業規模が大きいほど、成長率が高いほど、マネジメント・プラクティスのスコアが高く、歴史の長い企業ほど、創業者が経営する企業ほどスコアが低いことも見出された。さらに、スコアの背後にある3つの潜在因子(変革実行力、結果チェック力、適正評価力)を抽出し、潜在因子ごとの形成要因を分析すると、潜在因子の間で形成要因に違いがあることが明らかになった。これは、いかなるマネジメント・プラクティスの向上を目的とするかに応じて、異なる要因に働きかける必要があることを示唆する。マネジメント・プラクティスの形成要因を明らかにすることは、企業、産業、国の間で経営管理や人的資源管理の違いがなぜ生まれ、持続するのかを理解することであり、経営パフォーマンスの差異がなぜ持続するのかという根本的な問題の理解に通じる。それゆえ、この研究で利用されたマネジメント・プラクティスに関する調査が、今後も国際比較可能な形で、包括的・継続的に行われることが期待される。