派遣労働は正社員への踏み石か、それとも不安定雇用への入り口か

執筆者 奥平 寛子  (岡山大学) /大竹 文雄  (大阪大学) /久米 功一  (名古屋商科大学) /鶴 光太郎  (上席研究員)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-055
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

労働者派遣法の改正が検討される中、派遣労働を通じた就労が労働者のその後の厚生に与える影響について十分な検証がなされていない。本稿の目的は、派遣労働を通じて就労することが労働者のその後の正社員就労状況や賃金率に与える影響について実証的に明らかにすることにある。本稿の結果によると、以下の2点が明らかにされた。第1に、派遣労働を通じて働くことは、失業状態でいることと比べてその後の賃金率が有意に高くなる。第2に、派遣労働を通じて働くことは、パート・アルバイトを通じて働くことと比べてその後の正社員就業率が低くなる可能性を否定できない。つまり、派遣労働は少なくとも短期的には金銭的な貧困対策として機能してきた一方、正社員就業を希望する労働者の「踏み石」としての機能を果たしてこなかった。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:11-E-077