非正規労働者はなぜ増えたか

執筆者 浅野 博勝  (亜細亜大学) /伊藤 高弘  (大阪大学) /川口 大司  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-051
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

過去20年の間に、日本の雇用を取り巻く状況は大きな変化を遂げている。非正規化の進展は最も顕著な現象の1つであり、1986年には17%程度であった非正規労働者の比率は、2008年には34%までにも増大している。本稿ではこの非正規労働者の増加という長期的傾向の解明を試みる。まず同時期における非正規労働者の正規労働者に対する相対賃金は非常に安定的であり、このことは非正規労働者の相対的な需要のみならず供給も増大していることを示唆している。ただし、産業構造の変化や労働人口構成の変化は非正規労働者の増加の4分の1程度しか説明しておらず、残り部分については、女性労働者の非正規就業確率の上昇、あるいは卸売・小売業やサービス業における非正規雇用需要の増大などが大きな要因となっている。また、企業データを用いた分析からは、非正規労働者の増加の6割程度を、産業構造の変化と生産物需要の不確実性そして情報通信技術の導入によって説明できることが示された。

※本稿は、英語版のディスカッション・ペーパー(11-E-021)を日本語版にしたものである