地域産業集積と生産効率性~確率フロンティア生産関数によるアプローチ~

執筆者 中村 良平  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年4月  11-J-043
研究プロジェクト 自立型地域経済システムに関する研究
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概要

地域産業集積の効果がどの程度存在するのかを知ることは、地域経済全体のみならず地域の産業振興政策を考える上でも重要なことである。

産業集積の特徴には、一企業の規模の経済で多くの就業者の集積が生まれる場合、地場産業都市に代表されるように同業種企業が特定地域に数多く集積している場合、またその派生系である関連業種も集積した場合、さらにコンビナート型の集積の場合などいくつかのケースが存在する。

都市・地域といった集計単位で見ると、これら集積の効果は一括りになるが、個々の事業所にとってみれば集積の外部効果の程度はそれぞれ異なるであろうし、それは規模によっても業種によっても異なるであろう。従来からの集計データでの集積の経済効果の分析では、個別事業所の生産効率性への集積効果を識別することはできない。

本研究では、立地状況の特徴、地域内での空間分布の特徴を指数化し、地域集積の要因に関する変数を定義する。次に、事業所単位のデータで確率的フロンティア生産関数を推定することで、事業所別に生産効率性の指数を求める。こうして推定された事業所単位の効率性の異なりは、当該事業所の固有の事情に加えて、同業種集積(事業所規模、従業者規模)の状況、取引事業所の立地状況、立地地域の特性などによっても規定される。効率性指数を非説明変数として、個別事業所の特性に加えて地域集積の形状を表す変数に回帰してその要因を推定する。得られた推定結果は、その業種特性によって程度は異なってくるものの、空間的な同業種集積の効率性への効果を否定するものではない。