【WTOパネル・上級委員会報告書解説①】
コロンビア―入港規制措置 (WT/DS366/R)
―関税評価協定及びGATT 5条の解釈を中心に―

執筆者 小林 献一  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2011年3月  11-P-010
研究プロジェクト 現代国際通商システムの総合的研究
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概要

本件の先例価値は、まず関税評価協定及びGATT5条に関するWTO初のパネル判断という点にある。関税評価協定及びGATT5条に関する紛争は、GATT3条の内国民待遇違反やGATT11条の数量制限違反等と異なり、小規模であり注目を集めることも少ない。しかし、実務レベルでは発生件数の大きい紛争類型の1つである。

まず、関税評価協定について、パネルはコロンビアの関税評価方法が関税評価協定の定める方法に反しているかを検討し、コロンビア政府の措置は、取引の具体的状況を考慮せず、固定的に適用されているため、当該措置は関税協定1条、2条、3条、5条、そして6条に反すると判示している。またGATT5条に関して、同条2項は加盟国に対し、「積換、倉入れ、荷分け又は輸送方法の変更を伴うかどうかを問わず」、通過運送の自由を与えるように規定しているところ、コロンビア法は、物品の最終目的地がコロンビア国外か否かではなく、積換を条件として入港規制の免除を認めるものであり、GATT5条2項第1文に反すると判示している。

関税評価協定及びGATT5条に関する本件の判示は、ウィーン条約法条約に則った穏当なものではあるものの、関税評価協定やGATT5条に違反する措置が二国間で争われた際に、単なる条文解釈ではなく、実際のパネル判断に基づいた議論ができるという意味で、政策的なインプリケーションは大きいものと考えられる。