租税条約仲裁の国際法上の意義と課題-新日蘭租税条約の検討-

執筆者 小寺 彰  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-036
研究プロジェクト 通商関係条約と税制
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概要

2010年8月に署名された新日蘭租税条約はわが国が仲裁規定(租税条約仲裁)をおいた初めての租税条約である。この仲裁制度の特色は仲裁を相互協議手続の一環として位置づけたもので、2008年OECDモデル租税条約に倣ったものだ。本稿では、まず、租税条約仲裁の歴史を概観し、そのうえで、仲裁制度と主権(主権問題)、日蘭租税条約上の仲裁の特色を検討したうえで、同条約上の仲裁手続の分析に移り、透明性、条約解釈規則、仲裁の監督の観点から問題点を摘出し、改善を促す提案を行う。最後に、こうした理論的、制度的整理を踏まえて、わが国がOECDモデル租税条約を扱う際に注意すべき点を示す。