外資系企業の参入と国内企業の生産性成長:『企業活動基本調査』個票データを利用した実証分析

執筆者 伊藤 恵子  (専修大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-034
研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究
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概要

本稿では、国内企業の生産性が同一産業における外資系企業のプレゼンスと相関があるのかどうか、同一産業の外資系企業からのスピルオーバー効果があるのかどうかを、非製造業企業も含む大規模な企業レベルデータを用いて実証分析したものである。

分析の結果、製造業・非製造業ともに、国内企業の生産性に対する外資系企業の正のスピルオーバー効果は認められなかった。ただし、企業固有の属性により高い生産性成長率を実現している企業は、同一産業の外資系企業から正のスピルオーバー効果を受けていることを示唆する結果は得られた。さらに、製造業においては、技術フロンティアから遠い企業ほど、外資系企業からの学習効果によって長期的には生産性を向上させる可能性が高いことも示唆された。これらの結果は、外資系企業の参入が、企業のダイナミックな成長を通じて長期的な経済成長に貢献する可能性があることを示しているかもしれない。また、本稿の結果から、対内直接投資のスピルオーバー効果は産業や企業の属性に依存して異なり、均一ではないことも示唆され、正のスピルオーバー効果を実現するにはどのような要因が重要であるのか、さらなる分析・研究が必要である。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:11-E-063