オランダにおけるワーク・ライフ・バランス―労働時間と就業場所の柔軟性が高い社会―

執筆者 権丈 英子  (亜細亜大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-030
研究プロジェクト ワーク・ライフ・バランス施策の国際比較と日本企業における課題の検討
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概要

本稿は、ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関するオランダの特徴をとらえ、日本への示唆を得ることを目的とする。WLBの実現度を評価するにあたって、労働時間と就業場所の柔軟性に注目することができる。この点に関して、オランダは、現在までに、個人が労働時間を選択する自由度がかなり高い社会となっている上に、最近では、テレワークの活用により、就業場所を選択する自由度も高めようとしており、オランダにおけるWLBの実現度は高い。

はじめに、WLBに関連するいくつかの指標を、日本およびそれぞれに異なる特徴をもつ先進諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)と比較しながら、オランダの特徴を概観する。そして、オランダがWLB社会と評価できる理由を論じ、そうした社会を成立させている条件を、オランダ社会を理解する鍵となるパートタイム労働の制度と実態、日本のWLBにとって大きな課題となっている仕事と育児の両立支援、さらには就業場所の柔軟性をもたらすテレワークについて検討する。また、2010年9月に実施した、オランダの民間企業4社へのヒアリング調査から、オランダ企業におけるWLBの取り組みと人々の働き方の実態について考察する。