-企業情報開示システムの最適設計-第4編 IFRS導入と監査のあり方

執筆者 五十嵐 則夫  (横浜国立大学) /浦崎 直浩  (近畿大学) /町田 祥弘  (青山学院大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-016
研究プロジェクト 企業情報開示システムの最適設計
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概要

わが国では、2010年3月期事業年度よりIFRSに基づく財務諸表の任意適用が認められ、2012年度にはIFRSの強制適用の判断が行われることになり、2015年または2016年から適用される予定である。IFRSの主要特徴として、原則主義に基づいて財務諸表を作成することが挙げられる。原則主義では、目的を基礎とする基本原則に基づき、最小限の適用指針で、判断の行使を求められる。また、IFRSは、投資家などに有用な情報を提供するために、財務情報に将来キャッシュ・フローの正味現在価値を使用するなど、公正価値会計を基盤としている。この結果、財務情報には、より広範囲な会計上の見積もりを含み、経営者の主観的判断を伴うことが多いという特性、複雑な仮定、不確実性の程度などを包含することになる。

こうした状況の下、本DP4では、以下、五十嵐・町田論文において、IFRS下の監査において重要となる監査の品質のフレームワークを述べた上で、IFRSの下での監査上の課題として、監査判断、公正価値会計と監査可能性、エンフォースメントの問題を取り上げて論じている。

また、浦崎論文では、IFRSの特徴を、最善の仮定に基づき、また、仮説的仮定に基づく情報および仮説的仮定と最善の仮定が混在して作成される予測財務情報の監査・保証と同様の課題を持っているものと捉えた上で、予測財務情報の信頼性と保証の類型を検討し、かかる情報にいかにして一定の信頼性を担保しつつ目的適合性の質を促進するかを検討し、IFRSの監査への考え方を論じている。