-企業情報開示システムの最適設計-第2編 日本企業の持続的成長可能性と非財務情報開示のあり方

執筆者 國部 克彦  (神戸大学) /坂上 学  (法政大学) /古賀 智敏  (ファカルティフェロー) /小西 範幸 (青山学院大学)/久持 英司 (駿河台大学)/姚 俊 (日本学術振興会特別研究員 / リサーチアシスタント)/島田 佳憲 (神戸大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-014
研究プロジェクト 企業情報開示システムの最適設計
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概要

近年EBRなどの取り組みに見られるように、財務情報のみならず非財務情報をも含めた企業の情報開示が求められて久しい。本ディスカッション・ペーパーでは、この非財務情報について、社会環境情報・知的資産情報・リスク情報に分け、それぞれについて「なぜ開示しなければならないのか」という開示根拠の問題、「何を開示すべきなのか」という開示フレームワークの問題について検討をおこなった。またこれらの非財務情報を「どのように開示したらよいか」という問題については、近年の統合レポーティング(Integrated Reporting)の動向を踏まえ、またXBRLの活用を念頭に置きながら検討をおこなった。これらの非財務情報の開示は、理想的には何らかの制度的な対応がなされ、またXBRLの活用もそれら制度を背景として統合的なタクソノミを開発していくことかもしれない。しかしながらサステナビリティ情報や知的資産情報の開示すべき範囲・方法については、未だ十分なコンセンサスが得られておらず、また社会経済の状況により求められる情報が絶えず変化していくため、制度的な対応を求めることは現実的ではない。当面においては国際統合報告委員会(IIRC)等で国際的に議論が進められているように、投資家と企業の行動変革を促すことを目指した統合レポーティングでの開示充実を求めていくことが必要となる。また、これらの非財務情報の開示については、信頼性の向上と拡張に対する一定の歯止めとして保証を求めることの検討も必要となるが、それを実効的なものとするためには、企業の開示責任の拡大に対する認識を促すとともに、それに対しての監査上の経営判断の尊重および監査負担の軽減とを併せて議論を進めていくことが必要である。