中国との関係を模索するラオス

執筆者 原 洋之介  (政策研究大学院大学) /山田 紀彦  (日本貿易振興機構アジア経済研究所) /KEOLA, Souknilanh  (日本貿易振興機構アジア経済研究所)
発行日/NO. 2011年1月  11-J-007
研究プロジェクト 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容
ダウンロード/関連リンク

概要

ラオスは近年、東アジアでの国際政治の大きな変化以降、再度その地政学的位置が脚光を浴び、内陸国から架け橋国へその地位を高めるといった期待も語られている。だがその一方で、外国からの援助無しでは国家運営が苦しい。その中で、多額の援助と投資を行う中国との関係こそがこの国の将来にとって最大の問題となりつつある。その典型的事例が、競技場建設への援助と引き換えでのヴィエンチャン市内での新都市建設事業である。

対中関係の深化はラオスにプラスの効果をもたらす一方で、土地や環境問題、また中国人受け入れ問題等、いくつかの深刻な問題も生み出している。問題の全てが対中関係の深化だけに起因しているわけではなく、ラオス政府の開発政策にも問題はある。ただ、多くの問題が、中国への依存を強めることで発生していることは事実である。

現在の関係が、はじめから中国優位で構築されたため、ラオスが中国と同等の関係を構築することは大層困難であろう。ただ、中国との紐帯を維持しつつも、無作為に援助や投資を受け入れるのではなく、自国と国民にとっての利益を見極めることは重要である。特にASEANの一員として中国にどう向き合うかも重要な課題である。いずれにせよ、地理的かつ歴史的な辺境国家故に、ラオスは外交において難しい舵取りを迫られている。