執筆者 |
大江 志伸 (江戸川大学 / 読売新聞論説委員会特約嘱託) |
---|---|
発行日/NO. | 2011年1月 11-J-006 |
研究プロジェクト | 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容 |
ダウンロード/関連リンク |
概要
中韓両国が国交を結んだ冷戦崩壊後の一定期間、中朝関係は極端に悪化した。北朝鮮の核兵器開発で緊張が激化する中、金日成主席が急死した。北朝鮮の体制動揺に危機感を持った中国は、対北朝鮮支援に乗り出した。これを機に、中朝関係は修復へと向かう。金日成主席の後継者、金正日氏の総書記就任後、中朝間の首脳往来も完全復活した。
中朝関係の修復と中国経済の膨張を背景に、両国間の経済関係は拡大基調に入った。中国の対北朝鮮援助方針も、2000年の金正日訪中以降、片務的な援助という「緊急輸血型」から、自立を促す「体力回復型」へと転換した。中国資本による北朝鮮投資が空前の規模で拡大しているのも、この文脈上にある。
北朝鮮は中国依存を深める一方で、金正日体制を揺るがしかねない中国式「改革・開放政策」への警戒感を依然緩めていない。北朝鮮の核兵器開発は、軍事超大国・米国に対抗する手段という一義的な狙いだけでなく、「市場経済大国」として北朝鮮の命運を握るまでになった中国をけん制する手段としても機能し始めている。