中国市場とタイ産香り米ジャスミン・ライス:なぜ、世界最大の米生産国中国がタイ米を輸入するのか?

執筆者 宮田 敏之  (東京外国語大学)
発行日/NO. 2011年1月  11-J-005
研究プロジェクト 中国の台頭と東アジア地域秩序の変容
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概要

2008年、国際的な米需給の不安定化を背景に、世界は急激な米価高騰を経験した。こうした中、世界第一位の米輸出国タイの米輸出量・輸出額は急激に増大した。しかし、中国向けのタイ産高級香り米ジャスミン・ライスの輸出量は、前年比3割も減少した。本研究は、国際米価高騰とタイ米輸出全体の拡大の中にあって、なぜ、中国市場向けタイ産香り米ジャスミン・ライスの輸出が急減したのか? を検証する。実のところ、中国は世界一の米生産国であり、世界有数の米輸出国でもある。しかし、年間数十万トンながら、米の輸入もおこなっている。その米輸入の9割は、タイからであり、その大部分は高級ジャスミン・ライスである。タイ産ジャスミン・ライスは、世界中に輸出されるが、中国経済の成長と中高所得層の食生活の変化を背景に、中国南部の広州や深圳などに、中国向けの8割以上が輸出され、その消費が拡大してきた。ところが、2008年、世界的な米価高騰の中、中国向けタイ産香り米の輸出は急激な減少を見せた。本研究は、2000年代以降の中国向けタイ産ジャスミン・ライス輸出の拡大と2008年の急減を、数量的に整理した上で、商標の不正使用や中国産香り米の混入問題をはじめとする、中国におけるライス・ビジネスの問題点を分析した。